農地が変わる「平成27年農地法改正」の中身とは?

あまり報道されませんでしたが、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律が平成27年9月4日に公布され(平成27年法律第63号)、平成28年4月1日に施行されました。

今回の農地法の改正は、農地の取り扱いの根本が大きく変わることになりました。しかし、マスコミは大した報道もせずあっさりとスルーを決め込みました。とても大きな改正であったにも関わらずマスコミがほぼほぼスルーを決め込んだ背景には何があったのでしょうか?

今回は、平成28年4月1日より施行された農地改正についてご紹介したいと思います。

農地の根本が変わった平成28年農地法の改正

平成28年4月1日より施行されることになった今回の農地法改正ですが、改正の大きなポイントを冒頭からお話してしまいます。

それは、

企業が農地を取得することができるようになった

そう、それだけなのです。

これまでの農地法は、農地を取得できるものは農地を直接耕作するもの同士でのみ農地の売買を許されてきました。つまり、農業者以外の人々が農地を所有(購入)を希望しても購入することはできず、農地を購入する場合には農業委員会からの許可を得てた後、地目の変更を経て取得しかできませんでした。

もう少し詳しくお話しますと、農地の所有や売買を定めた農地法の中の「農地法2条3項」にの内を取得することができる(農地法2条3項の要件を満たす)ものは、農業生産法人のみに限定するとされてきました。農地法2条3項の要件はとても厳格に定められていて所謂従来までの農家を営んできた人々でなければ農地を取得することはできませんでした。

緩和された農地を取得できる法人の要件

しかし、今回の農地法の改正では、まず農地を取得することができる法人の呼称を「農業生産法人」から「農地所有適格法人」へと変更しました。

次に農地を所有できる法人として定められてた4つの要件のうちの2つを緩和しました。

以前の農地法では、法人の形態要件、事業要件、構成員・議決権要件、そして役員要件が厳しく定めされていましたが、今回の農地法の改正では、構成員・議決権要件と役員要件の2つの要件を緩和しました。

緩和された要件の中身

以下に緩和された要件をまとめてみました。

構成員・議決権要件

法人の名称 要件
改正前の要件 農業生産法人 農地関係者が3/4以上
継続的取引関係者が1/4以下
改正後の要件 農地所有適格法人 農地関係者が1/2超
農地関係者以外の者が1/2未満
農業に無関係な者であっても構わない

役員要件

法人の名称
改正前の要件 農業生産法人 役員の過半が農業に常時従事する構成員
かつ、上記の過半が農作業に従事
改正後の要件 農地所有適格法人 役員の過半が農業に常時従事する構成員
かつ、役員か重要な使用人の1人以上が農作業に従事

分かりにくい内容になっていますので、以下より詳しくご紹介していきます。

農地所有適格法人であるための法人形態

上の表では、法人の名称の部分が構成員・議決権要件、役員要件 共に法人の名称が「農業生産法人」から「農地所有適格法人」と名称が改められました。法人の名称が変わると同時に法人としての要件も変わりました。

では、今回の改正で新たに定められた農地所有適格法人になる為には、法人としてどのような法人形態である必要があるのでしょうか?

今回の農地法改正では、農地所有適格法人であるための要件として法人の形態は以下でなければならないと定めました。

  • 農事組合法人
  • 株式会社
  • 持分会社

一般の株式会社でも農地所有適格法人になることができると定められましたのです。しかし、すべての株式会社が農地所有適格法人になれるわけではありません。今回の農地法改正では、農地所有適格法人になることができる株式会社には要件が設けられています。

それが「発行する株式の全部に譲渡制限が設けられている会社に限る」という一文です。

農地所有適格法人となることを認めた株式会社という法人形態ですが、株式会社の所有権である株式の譲渡については制限がかけられていることを前提としています。

株式の譲渡制限は、通常、株式会社が設立される際に法務局に提出する「定款」に株式の譲渡について記載されていて、株式譲渡の制限があると定款に定められた株式会社の株式は、自由に売買することはできません。

株式譲渡制限の定めがある株式会社の株式を譲渡する場合には、必ず取締役会もしくは株主総会によって株式の譲渡が認めらなければなりません。これは、比較的小さな会社の株式は資本の額が小さい為に、比較的容易に株式の取得し会社の支配権を奪取することができる為、定款に定めることで会社が不都合な第三者の支配下に置かれることを防いているのです。

なぜならば、会社の株式の1/3を取得しますと、特別決議を単独で阻止することが可能になりますし、発行済株式の2/3超の株式を保有されてしまいますと、会社の定款の変更、取締役の解任、合併や解散など非常に重要な事柄を決める権利を握られてしまいます。

農地所有適格法人となる株式会社の株式の譲渡について制限が設けられていることを要件とした背景には、企業による乱開発の抑止、そして、日本の農地が株式の売買によって外国人へ譲渡されることを防ぐ目的に定めらたといって間違いないと思います。

役員要件の緩和

今回の農地法の改正では、役員要件についても大きく緩和されました。前述しました表にも記載しましたが、これまでの農地法では農業法人の役員となる為の要件として「農業の権利を持っていたり、農業に従事していたり、農作業の委託を行っている」など農業に従事していることという要件が入っており、農業に従事していないものの参入は認めていませんでした。

しかし、今回の農地法の改正では、農業に従事していなければならないといった制限を撤廃し、農地所有適格法人の営む農業とは全く関係のない者であってもその構成員となることを認めました。

さらに、農地所有適格法人の議決権においても、改正前の1/4未満という制限を1/2未満まで引き上げました。

役員要件緩和の目的

今回の改正農地法の執行は、異業種からの企業の農業への参入を促し、農地所有適格法人への出資を可能にすることによって「農業への流入を加速させ活性化」を目的としています。

今回の改正によって大きく緩和された農地法ですが、農業者と認められていない一般人は農地を所有することができないことに変わりはありません。

今後、農地の利用をもっと活発化させていかなければならない現実を考えますと、もっと革新的に農地法を変えていかなければ、日本の農地の有効的な活用は難しいようにも感じます。