初めての不動産投で確認しておきたいこと/前所有者に預けていた「敷金」

前回は、不動産投資目的で賃貸一棟マンションを購入した際の「賃貸契約」について、ご紹介しました。

初めての不動産投資の疑問を解決!収益物件購入後の入居者との賃貸契約

不動産投資を初めて行う場合、賃貸契約や敷金、その他にも物件の管理や入居者募集などなど気になることが多いのもの。そこで、条件の良い不動産投資物件が見つかったらすぐに行動できるように、不動産投資に関する情報は頭に入れておきたいですよね。

今回は、賃貸マンションを購入した際の「敷金」について、ご紹介していきたいと思います。

敷金とは

まずは基本の確認ということで「敷金」について確認しておきます。

敷金とは、「家屋や部屋を借りる人(賃借人)が所有者(賃貸人)に預けておく保証金」と定義されています。しかし、この敷金については地方によって意味合いが異なります。

主に東日本では賃借人に債務不履行がなければ物件の明け渡し後に敷金が返還される一時金として扱われますが、近畿地方以西における「敷金」は礼金としての意味合いとなり、物件の明け渡し後も返還されないことが慣習となっています。これを「敷引(敷引金)」といい、多い時には家賃の3.5か月分もの「敷引」が無条件に差敷かれるケース(個人契約の場合)がありますので、近畿地方以西で賃貸契約を行う場合には、「敷金」の意味合いが異なるのだということを頭の中に入れておかなければなりません。

敷金返還債務の承継

それでは、不動産投資にて賃貸マンションを購入後の「敷金」がどのような取り扱いになるのかについて詳しく見ていきましょう。

通常、不動産を購入した場合、決済と同時に司法書士が同席し、土地や建物の所有権の移転の手続きを行い、売主であった前所有者から買主となった旧所有者へ土地と建物の「所有権」が移転されることになります。そして、不動産の所有権の移転(引渡し)に合わせ、「敷金」についても「敷金返済債務」が旧所有者から新所有者に承継されることになります。

「敷金とは」でも、ご紹介しましたが、敷金というものは「家屋や部屋を借りる人(賃借人)が所有者(賃貸人)に預けておく保証金」ですので、預かっていた敷金を清算し返還する債務をおっているのは所有者、つまり賃貸人が返済しなければならない権利を持っているということになります。

これが「敷金返済債務」です。

所有権の移転と敷金返済債務

では、不動産の売買によって、賃貸マンションなどの所有権が移転した場合、「敷金返済債務」はどのようになるのでしょうか?

判例に見る敷金

賃貸物件を借りるときに預け入れた敷金の返還債務は、所有権移転後、誰にあるのでしょうか? もし、賃貸マンションの売買を行う際に、これまで前所有者が預かっていた「敷金」の引継ぎがあれば良いのですが、「敷金」の引継ぎがなかった場合、前所有者は「売却したのだから、敷金返済の義務はない」と言う可能性もあるでしょう。また、新所有者は「敷金を預かったのは旧所有者なのだから敷金の引継ぎが行われていない新所有者には返還する義務はない」と反論するでしょう。どちらの言い分もわかるような気もします。しかし、このような争いが行われ、一向に敷金が返還されないのであれば、敷金を預け入れていた賃借人の立場としてはたまったものじゃありません。

過去には、この「敷金の返還」について裁判で争われたことがありました。その裁判は最高裁判所まで争ったあげぐ最終的には最高裁判所によって判決が下されました。

その裁判で下された判決は、「最高裁昭和33年9月18日判決」とされ、判例理論が確立されました。

対抗要件 (賃借人が引渡しを受けていること)を具備した建物賃貸借については、「賃借建物の所有権取得者は、取得と同時に当然賃貸借を承継するものであって、承継の通知を要しない」

つまり、「賃貸建物(賃貸マンション)の購入者は、(仮に敷金の引継ぎがなっかたとしても)賃貸借契約と一緒に敷金の返還債務は新所有者に承継する。」と最高裁判所が結論づけました。

実際の現場では

最高裁判所の判決によって、「敷金返済債務」が新所有者に承継されると判例理論が確立されましたので、実際の取引では、不動産売買代金の決済の際に、建物売買代金金額から譲受人に承継される敷金の額を差し引いた額が前所有者に支払われることになります。

但し、このケースは前所有者が敷金を預かっていたケースです。ほとんどの大家さんの場合は敷金や入居者の募集、不動産管理などを管理会社に委託していますので、前所有者が委託していた管理会社に敷金の取り扱いについて事前に確認しておき、媒介を行った宅建業者に確認しておく必要があります。

新賃貸人が承継する敷金の総額

ここまで、賃貸物件の売買が行われ、所有者が変わった時の敷金の返還する義務を誰が負うのかについてご紹介してきましたが、敷金の金額の範疇についてご紹介していませんでしたので、最後に少しだけ「新賃貸人が承継する敷金の総額」についてご紹介したいと思います。

新賃貸人が承継する敷金の総額」についても、やはり裁判所で争われたことがあり、大阪裁判所「最判昭和44年7月17日」として既に判例理論が確立されています。

判例では、「建物賃貸借契約において、該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があつた場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人に承継される。」と解しています。

要約すると、前所有者が預かっいた額から未払い家賃を差引いた額が新所有者に敷金の返済額として承継されるということになります。

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