土地や建物を売却した際にどれくらい税金がかかるのか、とても気になりますよね。土地や建物の売却を希望されるお客様から「売ったら、どれくらい税金がかかるの?」といった質問が多く寄せられますので、簡単に不動産を売却した時にかかる税金についてまとめてみました。
不動産を売却した際にかかる税金
不動産を売却した際にかかる税金は以下の通りです。
- 売買契約書に発布する印紙税
- 抵当権抹消登記の登録免許税(1000円 ※土地と建物の場合は2000円)
- 不動産譲渡所得税
抵当権がついていない不動産の場合には「売買契約書に発布する印紙税」と「不動産譲渡所得税」の2つの税金がかかってきます。
3つの中で最も大きな税額となるのが、3番目の「不動産譲渡所得税」です。不動産譲渡所得税は不動産売買時の契約金額によって大きく異なりますので、注意が必要です。
では、上から順に見ていきましょう。
売買契約書に発布する印紙税
売買契約書に発布する印紙は売買を行う契約金額によって異なってきます。売買契約書を作成する場合、売主と買主用に2部作成しますので、印紙代金は売主・買主がそれぞれ一部づつ負担するというのが一般的になっています。
以下の表は、国税庁のホームページに記載されているものですが、例えば売買代金が1500万円だったとうると印紙代は本則税率では2万円ですが、租税特別措置法という法律によって平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成された10万円を超える契約書には軽減税率が適用されますので軽減税率の適用で1万円となります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48 |
ここでよく勘違いされるのが「超え」「以下」。例えば「以下」とはそれも含むという意味になりますので、「(100万円以下)と書かれているものであれば100万円までは税率200円」ということになります。「100万円を超え」と書いてあるものは100万1円から印紙の税率が変わるということになります。
一般的には、売買契約の前までに宅建業者から諸費用としてこれくらい掛かりますと連絡があり、印紙代金については事前に宅建業者が購入しておき、契約時に印紙の代金額を支払うというのが一般的なパターンになります。
因みに、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成される契約書に発布する印紙ついては印紙税の軽減措置が適用されていますので、表の右の列に記載されている税率を適用することになります。
抵当権抹消登記の登録免許税
売却する不動産に抵当権がついていた場合には、売却して得た代金を金融機関などの返済にあてて、抵当権を抹消した上で、土地や建物の不動産を買主に引き渡します。
抵当権抹消についての流れや手続きについては別の機会にご紹介したいと思いますので、ここでは割愛します。
抵当権抹消登記の登記免許税の計算方法ですが、不動産1個につき1000円と非常にシンプルになっています。土地と建物があれば、2個ということになり2000円の登記免許税がかかってきます。土地だけの場合は1個ですので1000円です。
ひとつだけ注意しておきたいのは、マンションを売却する場合です。マンションの場合、〇×△号室 となっていますので、建物だけのような気がしてしまいますが、実際にはマンションが建設されている土地の所有権も有していますのでマンションが建っている土地の登記の変更も必要になります。また、マンションの土地は1個とは限らず2個・3個と複数の場合がありますので、土地と建物合わせて2個や3個となる場合がありますので注意が必要です。
不動産譲渡所得税
不動産を売る場合、不動産を売った年の1月1日現在で不動産の所有期間が5年を超えるかどうかによって、適用する税率が異なります。
- 5年以上所有されている場合には、長期譲渡所得
- 5年以下の所有である場合は、短期譲渡所得
となります。
相続や贈与によって土地や建物の不動産を取得した場合も同様で、相続や贈与があった時からが譲渡した年の1月1日までの所有期間で5年の所有があるか否かで「長期譲渡」もしくは「短期譲渡」の税率が適用になるか判断されることになります。
国税庁としては、日本のバブル期の反省から短期で売買を繰り返す法人などに高い税金を掛けるということで過剰な土地の売買を抑制したいという意向のもと長期譲渡所得と短期譲渡所得に係る税率を大きくかえているとしています。
譲渡税率表
以下の表は、譲渡税率表です。
区分 | 所得税 | 住民税 |
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
短期譲渡所得にかかる税金が長期譲渡所得に係る税率の約2倍になっていることから短期譲渡に係る税金が極めて高いことがわかります。
土地や建物の譲渡所得に対する税金にも多少ですが控除という制度があります。課税の対象となるのは売却した金額から購入した金額を差し引いた額、つまり売却”益”ですが、売却益からさらに不動産を売却した際にかかる譲渡費用を差し引くことができます。
譲渡税の課税対象計算式
譲渡税の課税対象計算式は以下の通りです。
課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
もう一度補足しておきますが、譲渡価格とは、土地や建物を売る時の契約金額です。取得費用とは、土地や建物を購入した際の購入金額です。そして、譲渡費用とは土地や建物を売却した際にかかった諸費用のことで売買契約書に発布した印紙代金、不動産の売買における仲介手数料、その他立退料や古い建物を解体した解体費用(取り壊し費用)などが譲渡費用として認められています。
譲渡税の特別控除
不動産の売却にかかる譲渡税には、「特別控除」という特別に設けられた控除も認められています。特別控除に認められた要件は、以下の通りです。
- (1) 公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
- (2) マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
- (3) 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
- (4) 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
- (5) 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
- (6) 農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
(1)は、公共事業によって土地や建物を売却しなければならない時です。例えば、道路が建設される為、土地と建物を自治体に売却した場合に該当します。大半の方が控除の対象となってくるが(2)のマイホームを売った場合の特別控除です。
「(2) マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例」は、自宅を売却された際に諸経費に加え3000万円までの控除が受けられるということになります。但し、以下の適用除外も定められていますので、確かに売却したマイホームに住んでいたという事実の証明(住民票など)が確定申告の際に必要になります。
- (1) この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- (2) 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
- (3) 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋
というのがこれまでの法律でした。
というのも昨年、安倍内閣が発表した「平成28年税制改正大綱」の中で条件に該当する空家を売る場合、一定の空家に関してはその家屋や土地を譲渡した際の所得(譲渡したことで得られる利益)の3,000万円特別控除を適用するとの発表がありました。
「平成28年税制改正大綱」の空家 譲渡税にかかる特別控除
気になる条件は以下の通りです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったもの
- 平成 28 年4月1日から平成 31 年 12 月 31 日までの間に譲渡をしているもの
- 相続開始の日から3年を経過する日属する年の12月31日までに譲渡しているもの
- 譲渡の対価の額が1億円を以下のもの
昭和56年というと西暦1981年ですので、築36年以上の建物ということなります…。また、相続時に賃貸として貸し出している建物も控除の対象にはなりませんので、厳しい条件をクリアした”空家”でなければ「平成28年税制改正大綱」で定められた控除を受けられないということになります。
空家が日本中で増え続けている日本では、親世代が住んでいたマンションや一戸建てを相続するといった方が今後増えてくると思いますが、もう少し思い切った税制改革をしても良かったのではないかと思ってしまいますが、仕方がありません。